【シカ・イノシシ・サル・クマなど】野生動物による被害の現状と経済影響
近年、日本各地で野生動物による農作物被害が深刻化しています。シカ、イノシシ、サル、クマなどの害獣が引き起こす被害は、農業だけでなく、林業や漁業、さらには観光業にまで及んでいます。この記事では、害獣被害の実態と、それが地域経済に与える影響について詳しく解説します。
害獣被害の現状 – 農作物被害は年間161億円
農林水産省の調査によると、2020年度の野生鳥獣による農作物被害額は約161億円に上ります。内訳を見ると、シカによる被害が約56億円、イノシシが約46億円、ヒヨドリが約4億円、クマが約5億円などとなっています。
特にシカとイノシシによる被害が深刻で、全体の約7割を占めています。シカは農作物を食い荒らすだけでなく、樹皮を剥ぐなどして森林にも被害を及ぼします。イノシシは、根菜類を掘り起こしたり、水田を荒らしたりするため、農家にとって大きな脅威となっています。
サルやクマも、果樹や野菜、養蜂などに被害を与えています。サルは群れで行動するため、短期間で大きな被害が出ることがあります。クマは、人里に出没して人的被害を引き起こすこともあり、地域住民にとって恐怖の対象となっています。
人的被害と事故も深刻化
農作物被害だけでなく、人身被害も発生しています。環境省の調査では、2020年度にクマによる人身被害が143件報告されています。クマとの遭遇は、登山者やキャンパーにとって大きな脅威です。
シカやイノシシとの交通事故も多発しており、全国の交通事故の約1%を占めています。事故による人的被害や車両の損傷は、地域住民の安全や経済に影を落としています。
地域経済への影響 – 農家の収入減少と耕作放棄地の増加
害獣被害は、農家の収入減少につながります。被害を受けた農作物は販売できないため、直接的な経済的損失となります。さらに、被害を防ぐための柵の設置や、駆除活動にも多額の費用がかかります。
収入減少や費用負担から、農家の中には離農を選択する人もいます。農家の高齢化や後継者不足も相まって、耕作放棄地が増加しています。耕作放棄地は、害獣の隠れ家となり、被害をさらに拡大させる悪循環を生んでいます。
農業の衰退は、関連する産業にも影響を及ぼします。農機具や肥料、種子など、農業に関連する企業の売上減少につながります。
観光業への打撃 – レジャーシーズンに出没する害獣
害獣は、観光業にも影を落としています。レジャーシーズンには、キャンプ場や登山道、海水浴場などで野生動物の目撃情報が増加します。
クマの出没により、キャンプ場や登山道が一時的に閉鎖されることもあります。シカやイノシシが、ゴルフ場や観光農園に侵入し、施設の損壊や利用者とのトラブルを引き起こすケースもあります。
こうした事態は、観光客の減少につながり、地域経済に打撃を与えます。宿泊施設やレジャー施設の収入減少は、地域の雇用にも影響を及ぼします。
総合的な対策の必要性 – 個体数管理と被害防除
害獣被害を減らすためには、個体数管理と被害防除の両面からのアプローチが必要です。
個体数管理では、狩猟による計画的な個体数調整が行われています。ただし、狩猟者の高齢化や減少が課題となっています。狩猟の担い手育成や、効果的な捕獲方法の開発が求められています。
被害防除では、電気柵の設置や、忌避剤の使用などの物理的防除対策が取られています。しかし、広大な農地や森林を完全に守るのは難しく、費用負担も大きな問題です。
国や自治体による支援の拡充や、地域ぐるみでの取り組みが必要不可欠です。また、生息環境の管理など、野生動物との共存を図る対策も重要です。
まとめ – 持続可能な対策で、地域の未来を守る
害獣被害は、農業や林業、観光業など、地域経済に多大な影響を与えています。深刻化する被害に歯止めをかけるためには、個体数管理と被害防除の両輪で取り組む必要があります。
持続可能な対策を通じて、野生動物と人間が共生できる社会を目指すことが重要です。地域の知恵と工夫、そして行政の支援により、被害を減らし、地域の未来を守っていくことが求められています。